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イエスでん

イエス伝

矢内原 忠雄

マルコ伝による

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 220,119 字 · 436 页

青空文庫

さればこそ、「荒すにくむべき者の、立つべからざる所に立つを見ば」というイエスの御言に対し、マルコ伝記者は「読むもの悟れ」と注をつけ、ダニエル書の預言の現代的適用に関して読者の注意を喚起し、信仰の堅忍を勧めたのであります(一三の一四)。

「荒すにくむべき者」がエルサレムの神殿に立ちて、国民に滅亡の臨む日は、まことに大なる「患難の日」であります。この「患難の日」という語も、ダニエル書一二の一の引用であって、ユダヤ人にはたやすく連想せられうる国難の日であります。しかし事は政治上・社会上・宗教上の事変をもっては終わらない。旧約の預言者もしばしば預言したように(イザヤ一三の一〇、三四の四、アモス八の九、エゼキエル三二の七参照)、

その時、その患難ののち、日は暗く、月は光を発たず。星は空より隕ち、天にある万象震い動くであろう。(一三の二四、二五)

これは国民の罪に対する審判の、自然における反映です。人が罪を犯して自然界が穢れざるわけではなく、人の罪が審判かれて自然界に天変地異の起こらぬはずがない。人と自然と、神の創造り給える全宇宙が罪の審判のために震動し、天の涯より地の極まで、万物呻吟の声は一つとなって空に冲する。