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イエスでん

イエス伝

矢内原 忠雄

マルコ伝による

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 220,119 字 · 436 页

青空文庫

そしてこの相違はパリサイ人のイエスに対する敵対のくり返されてゆくうちに、ますます明瞭になってきました。相違は戦闘を生み、戦闘によりて相違は深刻を加えた。しからば両者の相違点はどこにありましたか。

も一度戦闘の発端を見てみましょう。パリサイ人の学者らは、イエスが中風の者に「子よ、汝の罪赦されたり」と言われたのを聞き咎めて、「この人何ぞかく言うか、これは神を涜すなり、神ひとりのほかは誰か罪を赦すことを得べき」と論じたのであります(二の五―七)。これだけ聞けば、パリサイ人の言ったところは非常にりっぱな議論です。神様だけが罪を赦すことができるという、神唯一の信仰表白であります。後のルッター、カルビンら、近くは我々の先生や先輩の唱えた信仰であります。神様だけ、神唯一、神本位の信仰であります。言葉だけを聞けば、パリサイ人の方が信仰が深く、イエス様の方が人間的であるように見える。

しかし一体パリサイ人の言う神とはいかなる神様なのか。パリサイ人の考えている神は、法律の条文集・判例集のような神です。彼らは神中心主義ということを言いましたが、彼らの神中心とは律法とその細則とをもって日常生活を厳格に束縛してゆくことに存しました。