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カストリしゃじけん
カストリ社事件
「別冊オール読物」1948(昭和23)年9月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,043 字 · 21 页
ひとり、わが社に於ては。
悲しい哉、カストリ社は、受附をつくるオカネもないのであった。
「ねえ、先生、受附、なんとかして下さいよ。文士だの、漫画家だのって、まア、うるせえなア。顔さえ見りゃ、原稿料、よこせえ、ワア、ひでえ。カストリ横丁のオヤジまで、借金サイソクに来やがんだもの。わが社に於ては、扉にカギをかけ、密室に於て事務をとる。そうも、いかねエだろうな。ねえ、先生」
「なにィ」
先生に話しかけても、ムダなのだ。先生は、世の雑音に対しては、なにィ、と一言答えるにすぎないのである。悲しいことを言うな。受附をつくりたいのは、先生自身の必死の願望であるぞ。なにィ。
ところがさ。はからずも、二十万円の現金が、ころがりこんできた。編輯長の花田一郎が、もらってきたのである。
十年前の花田一郎は、浅草のインチキ・レビュウの俳優であった。芸はへタだ。お客には受けなかったが、仲間には、受けた。なぜなら、女の肌のむせかえるような世界にすんで、この男は、女なぞには、目もくれなかった。彼は男が好きなのである。けれども、オカマヤの如き下品なるものではない。およそ彼は露骨なるものを、にくむ。