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カストリしゃじけん

カストリ社事件

坂口 安吾

「別冊オール読物」1948(昭和23)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,043 字 · 21 页

青空文庫

金曜日に、車氏は自家用車を横づけに、秘書をしたがえて、現れた。秘書の肩幅は、一メートルぐらいあった。

社長の先生と握手して、

「御高名はうけたまわっております」

と、如才のないこと云って、ズカ/\と奥へすゝんで、社長の椅子へドカンと腰かけたが、ヒョイと立って、

「そうだ。紹介していたゞきましょう」

「こちらは、車組社長、車善八氏です」

と、花田が一同に披露した。

「フム。その隅、しッかり、こっちを、向かんか。動作が、いかんぞ。ハキハキせんか。貴様ら、なッとらんぞ。仕事は遊びじゃないんだ。貴様ら、女優の海水着写真をうつす時だけ、六人も揃って行くそうじゃないか。何たることだ。女優の座談会にも、六人そろって行ったそうだな。ヒイ、フウ、ミイ、……アレ、アレ、六人、編輯の全員じゃないか。何たることだ。オイ、何たることだ」

「ワーッ。弱った。これは、こまった。それは、その、そういう意味じゃないんで、それは、その、あの、茶のみ話に、ただ、つまり、ゴシップ的に、そんなことを申上げたゞけでして」

と、花田が苦悩に身もだえて、頭をかゝえて、腰をくねらせて、懇願したが、

「なにィ。