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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「冗談言っちゃいけない。日本人だよ」

「はゝあ」

「明兆といって、豪いお坊さんだ」

「成程」

「東福寺の大道禅師についていたが、絵を描いてばかりいてお勤めを怠るものだから、首尾が悪かった。或時、禅師の不在を幸いに、不動尊の絵を描き上げたところへ禅師が戻って来た。明兆は慌てゝ、膝の下に匿したが、名筆の力は恐ろしいものさ。巨勢金岡の描いた馬が夜毎に抜け出して苗代田を荒したという話を君は知っているだろう?」

「はあ」

「明兆も金岡に劣らない。膝の下に匿した絵から忽ち不動明王の炎がポッポ/\と燃え上った。幾ら押えても消えない。大道禅師は驚いた。『申訳ございません』と明兆が出して見せると、禅師は感に入って、少時言葉もなかった。以来、明兆が絵を描くのを大目に見てくれたという」

「豪いものでございますな」

「後に東福寺の殿司になって、兆殿司と号した。種々と逸話のある人だよ。貧乏で絵の具が買えなかった頃は近所の川から五色の石を拾って来て、それを砕いて使ったという」

「成程」

「その石の粉で描いた涅槃像が現に東福寺の宝物になっている」

と赤石さんは講釈を始めた。談義が長いので皆辟易する。