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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「さあ」

「五時きっかりだそうでございます」

と松本さんは又知っていた。

「九時から五時というと何時間だろう?」

と社長は指折り数えて、

「八時間だね。我輩は四時間だ。見給え。我輩は半分しか寝ない」

と夕食後一時間ばかり微睡むことは棚へ上げて、大いに主張した。

「はあ」

「赤石君よりは毎日四時間長生をしている」

「然ういう勘定になりますな」

「毎日八時間死んで長生をしよってのは料簡が分らない」

「成程。不老長寿法にも自家撞着がございますな」

と中島さんは要所々々を決して外さない。

「算盤に乗らない長寿法は駄目だよ」

「しかし社長と赤石さんは一緒になりません。赤石さんが社長の真似をなされば一週間で参ってしまいます」

「ハッハヽヽ」

「社長は特別でございますから、一般の標準になりません」

「いや、それが心掛け一つだ。我輩は元来こんな頑健な人間じゃなかった。自叙伝にも書かせている通り、実は月足らずで生れて来て、育つか何うか疑問だった。君、熊野君」

「はあ」

と私は頷いた。

「熊野君は職務柄我輩の日常を研究しているから、何でもよく知っている。この間中は二人で毎晩首っ引きだった。熊野君もナカ/\元気旺盛だよ」