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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「何う致しまして」

「勇将の下に弱卒なしでございましょう」

と中島さんが調子を合せた。

「我輩の感化を受けて、昨今は欠伸をしなくなったね。熊野君」

「いや、時々お小言を頂戴致します」

「我輩は自分が睡がらない方だから、欠伸をされるのが一番厭だ」

「…………」

「欠伸は頭の中の発条が弛んでいる証拠だよ」

「はあ」

「会社でも幹部丈けは流石に緊張している。重役で欠伸をするものは一人もない。尤も赤石君のように八時間も寝れば、頼まれても出来まいけれど」

「ハッハヽヽヽヽ」

と私達の笑った声には悲壮なものがあった。これから語って聴かせるから欠伸をするなという警告である。日本間の方ではお師匠さんが待ち草臥れているのか、三味線を弾き始めた。社長は無言のまゝ、それを指の先で合せていたが、忽ち、

「ところで何うだね? 中島君」

と頭を擡げた。

「一段拝聴させて戴けませんか?」

と中島さんは正解した。尤もこれを履き違えるようなら庶務課長は勤まらない。三味線が紛れのない註釈を加えている。

「何だい? 義太夫かい?」

と社長は押しが太い。所望されて拠ろなく語る形式にしたいのだ。

「はあ」

「これは驚いた」