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クリティシズムとにんしきろんとのかんけい

クリティシズムと認識論との関係

戸坂 潤

「学芸」1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,091 字 · 50 页

青空文庫

元来が漢代の儒教や支那仏教のものであったカテゴリーをば、近代社会のカテゴリーへまで翻訳する労を取らないで(言葉を翻訳しても駄目でカテゴリー体系が現わす思想を近代的に翻訳しなければならぬが)、そのまま現代へ持ち込むことが、現に如何に現代社会の合理的認識を妨げているかを見るべきだ。之を翻訳した上で持ち込むならば、それは東洋文化の古典として、現代人にとって文献学的に絶大な価値のある文化財となり得る。翻訳の労を取るか取らないかで、宝石も瓦礫と化する。広義の翻訳一般はこうした一種の論理学的機能であるが、普通の意味での翻訳も、思想を国語に基づく特殊性から解放し、宇宙的な世界理性による一般性の場所に於て、之を分封するという論理的操作である。場合によっては漢籍はヨーロッパ訳の方が示唆的であったりするのは、ここに原因する。翻訳によって原物は殆んど全く別の姿に変わるのではあるが、その換骨奪胎に於て必ずもののエッセンスは再生され得ねばならぬ。もしそれが原則的に不可能だと云い、本気で翻訳が文学的に不可能だというなら、世界文学などというものはあり得ないということに帰着する。