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クリティシズムとにんしきろんとのかんけい
クリティシズムと認識論との関係
戸坂 潤
「学芸」1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,091 字 · 50 页
バイブルはユダヤ人の文学でしかなく、ゲーテの『ファウスト』はドイツ人の文学でしかなくなる。だが新約は却ってギリシア=ローマ人の手によって彼等の言葉で書かれたのではなかったか。又イギリスのマーローやスペインのカルデロンの『ファウスト』はどうなるのか。実を云うと、世界文学は翻訳によって可能になるのではない。逆にそれは翻訳に先行し、翻訳を社会的に成功させる文化的条件をなす。世界文学は社会のインターナショナリズムによって必然にされるとも宣言されている。――すると翻訳の問題は文芸に就いて云えば、根本的には世界文学の問題である。文化一般についてはそれは世界文化の問題である。文化を世界的に運搬媒介するという問題だ。すると之はクリティシズムと大同小異の本質を備えていると云わなくてはならなくなって来る。実際、翻訳の社会的目的は文化の紹介であろう。紹介を少し具体的にやろうとすれば、いやでも批評へ赴かざるを得ない。でつまりクリティシズムなるものは、諸文化内部に於ける一切の細胞間の、広義に於ける翻訳のようなものと考えられていいわけである。
さて話をクリティシズムの文化運搬性に帰えそう。