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サーカスのしょうねん

サーカスの少年

小川 未明

「国民新聞 日曜付録」1929(昭和4)年7月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,095 字 · 7 页

青空文庫

少年は、障子を開けて、うちわで、はちをあおって、逃がしてやりました。

「そうだな、美しい、やさしい娘さんかもしれない。」と、アイスクリーム売りのおじいさんがいったのが、頭に浮かびますと、彼は、家出してわからなくなった、一人の姉のことを思わずにはいられなかったのでした。

「おれも、これから広い世の中へ出て、姉さんを探してこよう。そうしたら、お母さんも、お喜びなさるだろう。」

少年は、白い花を見つめているうちに、こう決心しました。このとき、不思議にも白い花は、ポタリと音をたてて、枝をはなれて、下に落ちたのでした。

*   *   *   *   *

それから、二、三年もたった、後のことです。少年は、あるサーカス団に加わって、諸国を流浪していました。自分の姉が、サーカス団に加わっているようなうわさを聞いたからでもありました。

サーカスの一座は、あるときは西に、あるときは東に、ところ定めず、興行をつづけて歩きました。真夏の空に、高いテントを張って、あぶない芸当を演じたのです。少年は、綱渡りをしたり、さおの上で逆立ちをしたり、いろいろの軽業をするようになるまでは、どれほど、つらいめをみたかしれません。