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「近代文学 第四巻第一一号」1949(昭和24)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,635 字 · 14 页
とにかく非常に抱負を持って書いている、小説のスタイルというものをすっかり変えてやろうと思うんだ。
石川淳さんのものは大がい読んでいるが、あの人はボクに似たところがあるよ。淋しい英雄主義だ。ボクはまた獅子文六が好きだ。淋しい思想家で、書くものにコモンセンスが行きわたっている、インテリの見本みたいな人だ。事実学問もあるしね。ボクと石川さんとどちらかといえば石川さんに似ている、ボクは偏狭だし、獅子さんは寛大だね。
芥川賞の委員になったんでいろいろ若い人の作品をたくさん読んだが、やはり由起しげ子なんかいゝね。賞を貰ったやつより、「脱走」のほうがいゝ。ちょっと底光りのするものがある。真鍋呉夫も買うが、素質はいゝんだがまだ作品がついてこない。書き流している。処女作時代からあれじゃだめだよ。ヒラメクような才能はあるが、どれひとつ完成されたのがない。佐藤春夫氏も同意見だった。大岡昇平の『俘虜記』は好みからいうときらいだ。小林秀雄は正確だといっているが、あれは書かなくてもいゝことに正確だ。もっと簡単でなければいかん、あれじゃ素人臭いよ。それに「戦争物」を書くにしても、あんなに書くのは賛成じゃない。