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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
高く飛行機が飛んでる。
下で、裸の肩へ赤ネクタイを翻す工場学校のピオニェール達。タッタ今食堂で半コップぎりの牛乳を支給されて来た鍛冶部の連中。古ボイラーのまわりへタカったり、金屑の山をこじったり賑やかに蟻みたいに働いてる。
今日は「鋤」の「廃物利用突撃デー」だ。
ソヴェト同盟は五ヵ年計画で、役に立つものなら古桶の箍でもこねかえして機械にしてしまうという意気込みなんだ。
信吉も一生懸命ホジっちゃ地べたへ古鋲や変な古金物の端をはじき出してるところへ、ブラリと煙草をまきながらグルズスキーがやって来た。
「……今日は鍛冶部へ牛乳が半コップだけしか渡んなかった……知ってるか?」
「それがどうしたよ」
信吉は、額の汗を払いながら太い声出した。
「……見ろ。初めてだぜこの工場で。……農民は、だんだん労働者に食わせねえようになって来たんだ。奴等、怒ってるんだ。……二〇年の饑饉だってそこから起ったんだ」
こいつ何故、俺をつらまえちゃこういうことを云うんだ? 信吉の腹ん中には、さっき自分の眼で見た鍛冶部の連中の態度がうちこまれてる。彼等はこういう風には、そのことを扱ってない。