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トコヨゴヨミ
トコヨゴヨミ
田山 花袋
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页
これで出京の希望が十の八九まで破れたようにさえ勇吉には思われた。
二三日して刑事が訪ねて来た時は丁度活版所から出来た暦を届けてよこして呉れたところであった。勇吉は丁寧に刑事を座敷に通して、死刑に処せられた友達と自分との関係に就いて詳しく話して聞かせた。しかしジロジロと体を捜すようにして見る刑事の眼に出会って時々声を顫わせたりなどした。刑事は痩せた神経質の男を勇吉に見た。勇吉の眼のわるく光るのも気味わるく刑事は思った。何をするかわからない危険人物のように刑事の眼には映って見えた。
「何うも、そうでしょうけれど……私の方も役目ですからな。」
刑事はこんなことを言った。
「実際、馬鹿な話なんです。仕事をするにも、そんな風に思われていると、非常に迷惑なんです。友達の手紙の中に私の名があったから、帳面に書かれて了って、こうやって何処までも何処までもついて来られるんですが、その帳面から名を消して戴くわけには行かないでしょうか。調べるなら、いくら調べて頂いても好いんです。却って望むところなんです。調べもしないで、唯、跡をつけられるんですから困るんです。調べて頂きたいもんですがな。