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トシオのみたもの

トシオの見たもの

岡本 かの子

「朝日新聞」1921(大正10)年4月21日~30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,531 字 · 21 页

青空文庫

二

やがてトシオが来たのは、春の頃、トシオが雲雀の声を聞き乍ら、お友達とのどかに摘み草をしたり、夏のみずみずしい緑葉をふみ乍ら、姉様達と蛍狩をした、広い野原でありました。が、今はもう、秋もくれがたであります。野原の草は一面に枯れて、赤白く年寄りの髪の毛を延いた様に、ほおけ拡がって居ます。

「おや、僕達が、あんなに愉快にころげまわった草原も、こんなみじめに枯れて仕舞ったか。なぜこんな赤ちゃけた色なんかに変ったんだ。いつも青々として、僕達を遊ばして呉れないってあるもんか、ああいまいましい。また冬なんて嫌な用もない時節が来るのかな。

トシオは斯うつぶやき乍ら、野原のあちらこちらをさまよいました。トシオの持った竹の枝に追われて、足の弱った年寄りばったや、羽根の痩た赤とんぼが、よちよち、ふらふら、逃げまどいました。小春日和の午後の陽ざしは、トシオの広い賢げな額や、健康らしく肉付きの引しまった頬に吸い寄りました。そしてこの稚い冥想家の脊を、やわらかく撫で温めました。

二

すぴーすぴー、はろーはろー。と突然、何の鳥か、野原の真ん中にすぐれて大きく一本立って居る、欅の梢で鳴き声がしました。