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バルザックにたいするひょうか

バルザックに対する評価

宮本 百合子

「文学古典の再認識」芸術遺産研究会編、現代文化社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,904 字 · 62 页

青空文庫

早すぎて母になったベルニィ夫人と良人との結婚生活は性格の不調和から冷たいものであった。ベルニィ夫人の夏別荘がヴィルパリジェスにある。そこへ息子の復習を見てやりに行ったのが機会となって、バルザックは当時二十歳以上年上であった夫人と結ばれたのである。

バルザックにとってこの結合は初恋であり、ベルニィ夫人にとっては最後の恋であった。この結合において、若いバルザックの受けた影響の深刻さは、彼の無限な作家的観察力をもっても猶自身の力では計ることが不可能であったと思われる程のものがある。ベルニィ夫人はバルザックを世間に押し出すために全く「母以上のもの、友達以上のもの、一人の人間が他の人間に対してなし得るすべてのものに優る」献身的な情愛と社交婦人としての実際的な手腕を傾けたのであった。彼女はバルザックをカストリィ公爵夫人のサロンに紹介し、そこに集るド・ミュッセやサント・ブウヴなど当時の著名な文学者に近づけるための努力をした。十数年後ハンスカ夫人に宛てた手紙の中でバルザックが当時の優しい回想に溺れながら述べているように、困窮の中にある「人間を極度の卑屈から守る自負を」