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バルザックにたいするひょうか

バルザックに対する評価

宮本 百合子

「文学古典の再認識」芸術遺産研究会編、現代文化社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,904 字 · 62 页

青空文庫

に、様々の手に押されてわれわれの前に引き出されて来たのである。

彼の死後九十年近くも経った今日、バルザックに帰れ、と云い出した一部のプロレタリア作家が、各自のバルザックの推戴の不抜なよりどころとしたのは主としてマルクスやエンゲルスが断片的な文句でその労作のところどころに示している、バルザックの作品に漲っている濃厚な社会性とリアリスティックな描写とに対する評価であった。マルクスは、ホーマア、シェクスピア、ゲーテなどと共にバルザックの作品を愛好したのであったが、それは全くこの偉大な十九世紀の作家が「フランスの社会の最も素晴らしいリアリスティックな歴史を与えている」からであり、資本論の或る箇所では当時の読者に親しみが深かったバルザックの作中の人物文章を引用することが賢明なマルクスにとって便利であると思われた程、資本主義の「経済的なデテールという意味でさえも、当時の凡ての専門的な歴史家、経済学者、統計学者達の書いたものを、全部ひとくるめにしてもって来ても及ばない程の」「あらゆるゾラよりも遙かに偉大なリアリスト芸術家」であったがためなのである。

エンゲルスが今日から四十六年ばかり昔イギリスの社会民主主義的婦人作家マーガレット・ハークネスに送って彼女の作品を批評した手紙の中に、以上の消息は明らかにされ、同時に、エンゲルス