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バルザックにたいするひょうか
バルザックに対する評価
宮本 百合子
「文学古典の再認識」芸術遺産研究会編、現代文化社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,904 字 · 62 页
等、文学における階級性の問題はこの期間に殆ど信じられぬ程度にまで紛糾し曖昧にされたのであった。
文学におけるこの階級性の抹殺は、自ら進んでそのように作用した一部のプロレタリア作家自身の生活と文学とに方向を失わせたばかりでなく、ブルジョア・インテリゲンツィア作家たちの心持にも明らかな影響を及ぼした。これまで、文筆活動の表現においては反撥の態度をとったにしろ、或は一定の範囲での同感を示したにしろ、何らかの意味で彼等にとっても一つの社会的刺戟、張り合いとなり、新たな社会への道と新たな文学発生の可能性とを感じさせていたプロレタリア文学運動の一時的後退は、ブルジョア・インテリゲンツィア作家達をも、社会的な混迷・無力感に悩したのであった。
今日は既にプロレタリア文学の領域においても、ブルジョア・インテリゲンツィア作家たちの間にあっても、その一時的後退からの立ち直りの徴が顕著に認められて来ているが、オノレ・ド・バルザックの作品の大群は抑々以上のような雰囲気の裡に甦らされて来たのであった。ブルジョア・インテリゲンツィア作家は、一年来声を大きくして来た文芸復興を内容づけるためのリアリズム検討につれ、プロレタリア作家の或る者は、社会主義的リアリズムに対する或る種の解釈の模型として、バルザックの花車は、急調子に、同時に些か粗忽