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しこんぞめについて

ポラーノの広場

宮沢 賢治

宮沢賢治『ポラーノの広場』。同一底本的分册已合并为一书。收入:紫紺染について、泉ある家、十六日、手紙 一、手紙 三、手紙 二、手紙 四、サガレンと八月、バキチの仕事。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,934 字 · 50 页

青空文庫

斉田は岩石の標本番号をあらためて包み直したりレッテルを張ったりした。そしてすっかり夜になった。

さっきから台所でことことやっていた二十ばかりの眼の大きな女がきまり悪そうに夕食を運んで来た。その剥げた薄い膳には干した川魚を煮た椀と幾片かの酸えた塩漬けの胡瓜を載せていた。二人はかわるがわる黙って茶椀を替えた。

(この家はあのおじいさんと今の女の人と二人切りなようだな。)膳が下げられて疲れ切ったようにねそべりながら斉田が低く云った。

(うん。あの女の人は孫娘らしい。亭主はきっと礦山へでも出ているのだろう。)ひるの青金の黄銅鉱や方解石に柘榴石のまじった粗鉱の堆を考えながら富沢は云った。女はまた入って来た。そして黙って押入れをあけて二枚のうすべりといの角枕をならべて置いてまた台所の方へ行った。

二人はすっかり眠る積りでもなしにそこへ長くなった。そしてそのままうとうとした。

ダーダーダーダーダースコダーダー

強い老人らしい声が剣舞の囃しを叫ぶのにびっくりして富沢は目をさました。台所の方で誰か三、四人の声ががやがやしているそのなかでいまの声がしたのだ。

ランプがいつか心をすっかり細められて障子には月の光が斜めに青じろく射している。