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マルクスしゅぎとゆいぶつろん

マルクス主義と唯物論

三木 清

「思想」1927(昭和2)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,739 字 · 43 页

青空文庫

けれどこの普遍的意味は、マルクス的用語における「妖怪的対象性」(gespenstige Gegenst※(ダイエレシス付きA小文字)ndlichkeit)のうちに横たわっているに過ぎない。かつて人間の生を解放する役目をもっていた意識は、今はそれの固定された妖怪的対象性によって我々を身動きもならず支配する。意識は今や矛盾の存在である。マルクス主義的唯物論はこの矛盾の解決でなければならぬ。

* デカルトとアウグスティヌスとの対立を、デカルトと、彼と同時代に生きていてアウグスティヌスの思想につながっていたパスカルとの対照において眺めることは、我々にとって教訓多きことであるであろう(拙著『パスカルにおける人間の研究』参照)。

** 現代の心理学もまた主知的傾向から自由でない。そこでは知覚、表象、注意、思惟などが主なる問題を形成している。これに反して中世の哲学的心理学においては如何であるか。情緒もしくは情念(Passiones)はそれの最も好んで取扱った対象であった。近世の初めに当っても、デカルトやスピノザは、その主知主義的傾向にもかかわらず、また情念について詳細な、卓越した研究を遺している。