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マルクスしゅぎとゆいぶつろん
マルクス主義と唯物論
三木 清
「思想」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,739 字 · 43 页
この問を正しく捉えようとする者は、唯物論の名とともに不幸にも最もしばしば連想されているところの、一は理論的見解に関する、他は実践的態度に関する、唯物論のかの二つの形態を遠くに追い退けておかねばならない。マルクス主義は第一に生理学的唯物論ではない。それは意識の現象が脳髄の物質的構造そのものから導き出され、もしくは思想が、あたかも尿が腎臓から排泄されるように、人間の脳髄から分泌されるというがごときことを説くものではない。かくのごとき唯物論は、それをマルクスが形而上学的と銘打って排斥した当のものである。ところでまたマルクス主義は第二に倫理学的唯物論でもない。それは人間の一切の行為を物質的欲望の満足と個人的幸福の追求とに従属せしめようという主張ではないのである。マルクスはこのような快楽主義的、功利主義的思想に対して手酷しい攻撃を加えており、それについてはつねに侮蔑と憎悪とをもって語っている。
十八世紀風の、粗雑なる、粗野なる唯物論が退けられた後に、我々はまずいかにして、マルクス主義的唯物論のために、現実の地盤を獲得すべきであろうか。我々はすでに、唯物史観の構造を規定する人間学が、プロレタリア的基礎経験の上に立っていることを論述した。