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マルクスしゅぎとゆいぶつろん

マルクス主義と唯物論

三木 清

「思想」1927(昭和2)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,739 字 · 43 页

青空文庫

したがって近代的唯物論がまた実に近代的無産者的基礎経験のうちにその理論の具体的なる根源を有するということを明白ならしめることが、我々の現在の課題でなければならぬであろう。私はこの課せられた問題を十分に解決し得ることを期待する。

私の意味する基礎経験とは現実の存在の構造の全体である。現実の存在はつねに歴史的必然的に限定された一定の構造的連関において組織されている。存在の組織――アリストテレスのいうτ※(鋭アクセント付きα、1-11-39)ξι※(ギリシア小文字ファイナルSIGMA、1-6-57)――は、最も原始的には、それらの全体を構成する契機であるところの、人間の存在と自然の存在との動的双関的統一のうちに横たわっている。それが現実性においてある限り、人間は自然における存在すなわち生であり、そして自然はこの生に関係して限定されてゆく存在である。基礎経験が我々にとって構造づけられたまたは組織づけられた存在、したがってまさに現実の存在そのものを意味する以上、人々はこの概念によって、何者かの意識もしくは体験が直接に表現されていると考えてはならない。私が無産者的基礎経験というとき、私は特に無産者の体験する、あるいは無産者のみの体験し得る意識をいっているのではない。