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マルクスしゅぎとゆいぶつろん
マルクス主義と唯物論
三木 清
「思想」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,739 字 · 43 页
かえって私はそれによって特殊なる構造ある現実の存在そのものを指しているのである。ひとは基礎経験の名においてなによりも存在的なるものを理解すべきであって、決して意識的なるもの、したがってまた観念的なるものを理解すべきではないのである。むしろ私は意識的なるもの、観念的なるものが一定の構造と組織とを有する――それ故にこそまさに存在は運動し、発展することが出来る、――存在の運動と発展の過程において初めて、現実的になるということを主張したいと思う。基礎経験の「基礎」とは、このものが種々なる意識形態の根柢となって、それを規定することを表わすのである。現実の存在そのものを特に「経験」と称するのは、さきにも記したごとく、存在をそれ自体において完了したものと見なすところの、したがってそれを特に運動において把握することなく、かえって静的なるものに固定する傾向を含むところの、素朴実在論から我々を出来る限り截然と区別するためである。かくして基礎経験とは、相互に自己の存在性を規定しつつ発展する諸契機を有する、動的なる、全体的なる存在にほかならない。しかるに存在を組織づけ、構造づけるものは、根本的には人間の存在の交渉の仕方である。