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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

「ハッハヽヽ。此奴は好い」

「寸善尺魔だから善は急げということになる」

「しかしそんなのに選抜して貰っちゃ大変だよ。断りを食う方が仕合せだろう」

「それはそうだね。して見ると、少し慌てゝ見識を欠いたかも知れない」

「見識よりも誠意の問題だ。直ぐ気に入って直ぐ定めたんだから、先方も満足したろう」

「うむ。大いに感激していた」

「芽出度し/\だよ」

「前途が明るくなった。おい、何うしたんだ? 君は肩が濡れている」

「君だって濡れているよ。雨が降っているんだ」

「失敬した。下りよう」

と宮下君も気がついた。

早い結着だと僕は思った。土曜日に別れて月曜日に会ったら、もう一生の伴侶が定っている。電光石火だ。昨日まで丈夫で、今日死ぬ人もある。しかしこれは無常迅速の不可抗力だ。結婚は問題が違う。自由選択が利く。男性にしても女性にしても、初対面で堪能してしまっては、ロマンスも何もない。

「宮下君、君は結局するに仲人に餌をつけて貰って釣堀の魚を釣ったんだね」

と僕はつい偽らざる感想を洩らした。

「うむ。その通りだ」

「正直なところを言うと、僕は少し期待が外れたよ」

「何故?」

「君は青春の特権のロマンスを頭から辞退したことになる」