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ロマンスとえんだん
ロマンスと縁談
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页
行き方の違う恩師
奥さんも数年いた旧任地だから、思い出が懐かしいと見えて、そのまゝ坐り込んだ。先生はその後の経歴を掻いつまんで話して、
「時折昔の生徒に会うよ。この間は銀座で、先生々々と後ろから呼ぶ紳士があった。お見外れしたが、初任地の甲府で教えた生徒だった。出世して一流会社の重役になっていた。昔の生徒に会うのは、嬉しいものだよ。殊に立派になっていてくれると嬉しい」
「橘高君も遠い将来に於て課長ぐらいは請合です」
と宮下君が冗談を言った。
「しかし宮下君も無駄口を叩く割合に、大切のことは妙に口の短い人だね。橘高君と一緒の会社に勤めているなら、もっと早く知らせてくれゝば宜いのに」
「それは御無理でしょう。僕は今日初めて先生との関係を知ったんです。橘高君も今日偶然先生のお宅の門札を見て、初めて恩師ってことが分ったんですから」
「成程」
「何うも僕は歩が悪いです。橘高君も僕が今まで佐藤氏とばかり言って、量順さんと言わなかったのが悪いと言って責めるんです」
「ハッハヽヽ。それは少し無理だ」
と佐藤氏は自分のことを棚に上げた。
行き方の違う恩師
次の日曜に僕は改めて又恩師を訪問した。感謝の寸志を表したのである。