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ロマンスとえんだん
ロマンスと縁談
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页
それを僕に詳しく報告する。一々然るべき相槌を打って傾聴する僕はかなり人が好い。
「君、僕は大発見をしたよ」
と或日、宮下君が仕事半ばに注意を呼んだ。机が並んでいるから遁れられない。
「何だい?」
「ロマンスは婚約後にも発生するという事実さ。僕達は実に情緒纒綿だよ。日曜を待ち切れない。月水金は僕が帰りに寄ることにしている。誂え向きに郁子さんのところは中野、僕は荻窪だろう。晩くなっても驚かない。昨夜は郁子さんが駅まで送ってくれた。手を引き合って歩きながら、夏の月夜ってものはロマンチックですわねと郁子さんが言うんだ。お互に愛人のようですねと僕が言った。あら、愛人でなくて何? って訳さ。佐藤氏なんか何処かへふっ飛んでしまったよ」
「結構だね」
僕は応答に困ると、結構だねで間に合せる。宮下君は愛人との会話を文字通りに引用して主張を証明した後、
「君、それだから、いつまでもモヤ/\していちゃ損だよ。大海の魚を諦めて、釣堀の魚を釣る方が早いよ」
と忠告的態度に出た。
「自分の池へ水を引くのかい?」
「ロマンスは婚約後にも立派に起る。僕達は情緒纒綿たるものがあるんだ」
「同じことを幾度言うんだい? 寝呆けちゃいけない」