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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

と新婦が窘めた。

「橘高君は何でも人の責任にする人で、僕が量順さんと言わなかったのが悪かったんだって」

「悪いなんて仰有りはしませんわ」

「奥さん、今門のところで先生の令嬢らしい人を見かけましたが、先生のところはお子さんが多いんですか?」

と僕は訊いて見た。

「お嬢さんの下に御長男と御次男、その下に又お嬢さんがいらっしゃいます」

「子福者の方ですな」

「はあ。一番上のお嬢さんはとてもお綺麗でいらっしゃいますよ」

「その人でしょう、屹度。お父さんに似ていません。僕が習っていた頃、先生は獅噛火鉢のような顔をしていました」

「オホヽヽヽ」

「坊さんですよ、先生は」

「そうでございましょうか?」

「量順なんて名はお坊さんに限ります。僕達は量順坊と呼んでいました」

「お嬢さんが私にお父さんの綽名を教えて下さいましたわ。何処かの中学校では閻魔の塩辛とついていたそうでございます」

「成程。閻魔が塩辛を嘗めた顔だね。穿っている」

と宮下君が共鳴した。

「僕の学校では首くゝりとついていたんだよ」

「首くゝり? 何ういう謂われ因縁だね?」

「学校の裏の公園の松の木に首くゝりがあったんだ。その顔が先生によく似ていたというので、首くゝりで通っていたのさ。