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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

その首くゝりで僕が失策ったんだ」

「何うせ何かあるんだと思った。逐一旧悪を白状し給え」

「話そうか? 何うせ知れることだから」

「話さなければ、僕が訊いて見る」

「話すよ。或日、英語の時間に僕が当ったんだ。三年生の時だった。読んで行く中に、asquicklyas というところが出て来たから、僕は一つやってやれと思いついて、アズ・首くゝり・アズと読んだんだよ。するとクラス全体が笑い出した。『橘高君、もう一遍読んでくれ給え』と先生が言った。僕も全級の喝采を博した後だから、騎虎の勢いさ。アズ・首くゝり・アズといとも明瞭にやったんだ。皆又ワーッと笑った」

「先生、憤ったろう?」

「憤ったよ。『教室を何と思っている? 出給え』と来た。僕は今更恐縮して頭を下げていたが、『出給え』と又命じるから、スゴ/\教室を出た。こうなると同級生はもうヒッソリしてしまって見殺しだ。お調子ものは馬鹿を見る」

「後から厳罰を食ったろう」

「いや、お構いなしさ。先生は一寸行き方が違うんだ。却って僕を認めてくれて、他の生徒がつかえると、『橘高君、何うだ?』と指名するんだ。少しも意に介していない。それで与し易しと見たのが悪かったんだ」