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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

僕の方から昔話を持ち出したら、先生は悉皆覚えていた。今度は令嬢も出て来て斡旋してくれた。先生天性閻魔の塩辛だけれど、奥さんは目鼻立ちのとゝのった人だ。令嬢君子さんはお母さんに似たのだろう。宮下君の所謂トレラブルどころでない。甚だ敏感のようだが、僕は心動いた。

偶然は偶然を生む。恩師の娘さんだ。或は奇縁があるのかも知れないと考えた。それにしても、こんな綺麗な人が隣りにいるのに、宮下君は何故申込まなかったのだろうかという疑問が起った。既に縁談が定っているのだろうと解釈して見たが、それなら宮下君が話の序にそう言っている筈だ。矢張りまだだろうと思い直して、帰りに又寄って訊いて見た。

まだ定っていないようだと宮下君が答えた。

「とても見識の高い人で御註文がむずかしいんですから」

と郁子夫人が言った。

「何ういう御註文ですか?」

「学問をやる人なら博士、会社員なら重役、官吏なら局長ぐらいのところを狙っていらっしゃるんでしょう」

「冗談じゃありません。そんなのは皆頭が禿げていますよ」

「直接伺ったんじゃありませんけれど、兎に角高望みですわ」

「おい。お門違いをしちゃいけないよ。