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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

隣りは釣堀だ。君は大海の魚を釣る方針じゃなかったかい?」

と宮下君が思い知らせた。

僕は時折宮下君の家庭を訪れるようになった。一番親しい同僚だから不思議はない。しかしその都度佐藤先生の御機嫌を伺う方が主な目的だった。その目的の奥に又目的があるけれど、満を持して放たない。僕も大学は相当の成績だった。会社の方も卒業前に定ったので、彼方此方であぶれた連中とは違う。現在は押しも押されもしない。そういうことをそれとなく先生に通じてある。

宮下君は自分が満足している為めか、僕の心持を一向察してくれなかった。話が佐藤家に及んでも、至って当り触りのないことを言う。郁子夫人も君子さんはとても註文のむずかしい人ですからで片付けてしまう。取りつく島がない。

その中に僕は急ぐ必要を感じた。時間の解決を待っているよりも、当って砕けろだと思った。ついては矢張り宮下君に縋る外に仕方がない。そこで或日の帰りに宮下君を銀座の某料亭へ誘って、

「君、僕は君の軍門に降る」

と切り出した。

「何だい?」

「釣堀組に改宗するから、一臂の力を貸してくれ給え」

「佐藤令嬢かい?」

「うむ」

「駄目だろう、あれは」