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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

何だ? 日頃出入りしている教え子の僕を差置いて、性行調査を要するような馬の骨を取り上げるとは、恩師ももう耄碌している。そんなのなら諦める。よし。僕は矢っ張り釣堀の、いや、大海の魚を釣ると再び決心を固めた。

翌朝会社で顔が合うと直ぐに、

「君は寄らなかったね。待っていたのに」

と宮下君が咎めるように言った。

「後から話すよ。悉皆参ってしまったんだ」

「昨夜あれから佐藤氏が来たんだよ」

「ふうむ」

「君が寄っていると思って来たんだ。『芝居をやったが、薬が利き過ぎたようだ』と言って話し出した。君、三条高吉を何者だと思う?」

「同期だけれど皆目覚えがないから、世間に幾らも転がっている鈍才さ」

「鈍だぞ、君こそ。三条高吉を逆さまに読んで見給え。三条は少し苦しいけれど」

「…………」

「僕達に宜しく頼むと言うんだ」

「何あんだ? 僕か?」

「佐藤氏は味をやる」

「そうか? 恩師は矢っ張り行き方が違う」

と感心して、僕は初めて曙光を認めた。

(昭和二十六年六月、講談倶楽部)