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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

僕は敢えて催促しなかったが或日宮下君が佐藤氏の伝言を持って来た。僕に相談したいことがあるから都合の時に来てくれろというのだった。

「君はもう話してくれたのか?」

「いや、僕は矢っ張り困るから言わなかったが、郁子は何も知らないから話したのらしい」

「その手答えかな、それじゃ」

と僕は望みを嘱して、会社の帰りを宮下君に伴った。

「御足労をかけて済まないね」

と先生は犒らってくれた。

「いや、一向。宮下君のところへも御無沙汰していましたから、丁度宜かったです」

「実は君子の縁談が始まったんだ。相手が偶然君のよく知っている男らしい。君は東大の経済学部を何年に出たんだね?」

「…………」

僕は汗をかいてしまった。話を聞くと、君子さんの縁談の相手は、僕と同じ年に卒業している。三条高吉という秀才だそうだけれど、此方は覚えがない。何しろ二百名からの同期生だ。

「しかし一緒に出ているんだから、友人を通じて日常の性行を調査する便宜があるだろう?」

「はあ」

「大丈夫の人間だと言って持ち込んで来たんだけれど、仲人口にはうっかり乗れない。何分頼むよ」

僕は引受けたけれど、もう宮下君のところへ寄る元気もなく、トボ/\と駅への道を辿った。