轻松读懂日语经典作品
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いちにんならじ
一人ならじ
山本 周五郎
「富士」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,312 字 · 21 页
同情する者もあったが、概して悪い評判のほうが多かった、――すぐそばに手頃の丸太があるのに気づかないで、あたら片足を失ったということが、いかにも不たしなみに思えたからである。「がまん強いだけでも仕方のないものだ……」そういう言葉がいまさらのようにとりかわされるのを、大助も幾たびか耳にしたが、どう考えているのか自分では僅かに苦笑するだけで、それに就ては一言も弁解はせずに通した。
甲斐へ帰ってから間もなくのことだった。或る日ふと東堂舎人助が訪ねてきて、むすめ初穂との婚約を破談にしてくれと云いだした。
「人情としては云うに忍びないが、そのもとは再び戦場へ出ることのならぬからだとなった。これでは婿にと見込んだおれの志が外れるし、そのもととしても娶りにくいことであろう、こころよく無かったことにしてくれぬか」
ずばずばと飾りのない言葉が却ってうれしかった。大助は承知した。
「わたくしにはいささかも異存はございません……」
そう云ってすぐに話題を変え、この頃は鎧師の真似をしていると云って、部屋の一隅にひろげてある鎧おどしの道具をさし示した。当時の身分の軽い者はたいてい自分で鎧具足の繕いをやる。