轻松读懂日语经典作品
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いちにんならじ
一人ならじ
山本 周五郎
「富士」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,312 字 · 21 页
……わたくしは片足を失った、それがふたしなみだという噂も聞いている、だが、……こういうことはわたくし一人ではない」
「…………」
「戦場では幾十百人となく討死をする、誰がどう戦ったか、戦いぶりが善かったか悪かったか、そういう評判は必ずおこるものだ、わたくし一人ではない、なかにはそういう評判にものぼらず、その名はもとより骨も残さず死ぬ者さえある、そしてもののふの壮烈さはそこにあるのだ」
そう云いきって大助は声をのんだ、つきあげてくる感動を抑えているのであろう、膝の上にある拳が見えるほど固くにぎり緊められていた。
「家へお帰りなさい……」
暫くして彼は平生の声にかえって云った。
「一年まえから栃木家の嫁だったという、その言葉が本当なら家へ帰ってください」
「でもわたくし……」
「いや帰らなければいけない、なぜなら」云いかけて大助は身をひねり、とりひろげてある鎧作りの道具のかげから、長さ三尺ばかりの太い杖のような物をひき出して見せた。
「これがなんだかわかりますか」
「…………」初穂にはわからないので、そっとかぶりを振った。
「……足です」
「足とおっしゃいますと」
「この右足を継ぐのです」