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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
昨夜のことはまさか夢ではないのだから、いくら好意に解釈しても、夫人がこの事件でかなり重要な役割を演じていることは確だし、悪く考えれば、夫人が彼女にとっては継子である三千子を、何かの手段でなきものにしたとも疑うことが出来た。紋三は昨夜から度々この恐しい疑問にぶつかった。ぶつかる毎に思わずギョッとして、強いて外の事を考え考えして来た。
だが、万一その疑いが事実だったとしても彼は決して夫人を憎まないばかりか、寧ろ彼女と共にその罪の発覚を恐れ秘密を保つ為に努力したに相違ない。そして、この様な夫人の弱味を握ったことを彼女との間の永久の絆として、私に喜んだかも知れないのだ。彼の夫人に対する一種のあこがれは、この数日の間に、それ程までに育てられていた。随って、彼は明智の才能を恐れないではいられなかった。もし彼が首尾よく三千子殺害の犯人を発見し得たならば、そして、その犯人が外ならぬ百合枝夫人だったら、と思うと気が気でなかった。そんな意味からも彼は一度明智に逢って様子を探って置きたかった。
「併し、まさかそんなことはあるまい。もし夫人にやましいところがあれば、最初から明智なんか頼まないだろうし、昨夜の今日、彼女の方から明智を訪ねるというのも辻褄が合わない」