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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
それを考えると少し安心が出来た。
そうした物思いに耽っている間に、電車はいつか目的の停留場に着いていた。車掌が大きな声を出さなかったら、彼はうっかり乗越しをするところだった。菊水旅館を訪ねると、直ぐに明智の部屋へ通されたが、そこには明智一人きりで目的の山野夫人の姿はなかった。
「山野の奥さんはみえていないのですか」
紋三は座りながら、まずそれを聞いた。
「今、帰られたところだ。もう一足早ければ逢えた」
明智は相変らずニコニコして紋三を迎えた。
「そうですか、急いで来たんだけど、……それはそうと、その後何か手がかりでも見つかりましたか」
年齢や社会的地位は違っても、昔の下宿友達の心易さが、つい口を軽くした。それに紋三は昨夜の冒険でいくらか思い上っていた。彼の様な素人があの重大な秘密をかぎつけているのに、名探偵といわれる明智がまだ何事も知らないらしい様が、もどかしくもあり、少からず愉快でもあった。
「イヤ、発見というほどのこともないよ」
明智は落ちついていた。
「この事件はかなり難かしそうですね。あなたにも似合わない進行が遅いじゃありませんか」
紋三はついそんな口が利いて見たくなった。