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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
併しなぜ夫人が自ら進んで僕なんかに探偵を依頼したか、そして今になってそれを後悔し始めたか、この点がよく分らない。大体あの女自身が一つの疑問だよ。非常に貞淑の様でもあり、どうかすると馬鹿にコケットな所も見える。一寸とらえ所がない。だから、ひょっとしたら彼女は、態と僕の前にこの事件をなげ出して見せて、大胆なお芝居を打とうとしたのかも知れない。秘密がバレるおそれはないと信じ切って、たかを括っていたのかも知れない。女の犯罪者には、そういう突飛なのがあるものだ」
「もしそうだとすると、最近にその自信を失う様な事件が起った訳ですね」
「僕だって、これで中々働いているんだよ。彼女にもしうしろ暗い点があれば、心配し出すのは無理ではない。君なんか、僕が手をつかねて遊んでいた様に思っているだろうが、どうして、そんなものじゃないよ。現に君の昨夜の行動だって、すっかり分っているのだからね」
「昨夜の行動っていいますと?」
「ハハハハハ、しらばくれても駄目だ。自動車の番号まで調べがついているんだから。君が昨夜助手に変装して夫人ともう一人の男をのせて行った車は、君だって知るまいけれど、二九三六という番号なんだ」