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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

「イヤ、その正反対ですよ。別に身体が弱かった様にも聞きませんが、どっか病的なすさんだ感じで、顔なんかも青白い方でした。それをお化粧と表情の技巧で巧に隠していました。僕は以前から、何だか処女という感じがしなかったのですよ」

紋三は変な顔をして明智を見た。明智はしきりと例の頭の毛をかき回す癖を始めていた。

やがて明智はしゃべるだけしゃべってしまうと、相手がまだ何か聞きたそうにしているのも構わず、もう用事が済んだという調子で、女中を呼んでお茶を命じた。

間もなく紋三は暇を告げて菊水旅館を出た。彼は歩きながらも、電車に乗ってからも、明智に見せてもらった証拠品と、次々に現れて来た疑わしい人物のことで頭が一杯だった。

「あの中で、化粧品と吸取紙は三千子さんの指紋を確めるだけのものだから別として、椅子のクッションから出た手紙によって北島春雄を疑えば疑い得る外には、ヘヤーピンにしろ、石膏像にしろ、ショールにしろ、手提にしろ、フェルト草履にしろ、ことごとく山野夫人に不利な証拠ばかりだ。その上夫人は怪しい手紙を七輪にくべたり、不思議な男と密会したりしている。たれが考えたって、夫人こそ第一の嫌疑者に相違ない」