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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
彼は歯ぎしりをかんで狂喜しているのだ。
こもは余りのことに返事も出来ないのか、暫く何の声も聞えなかった。
「てめえ、いいやしめえな。もしいおうもんなら、こんだ、てめえがあの通りの目に逢うんだぞ、いいか」
うつろの中から又しても気味の悪い笑い声だった。
「とんでもねえ、お前とおれの仲じゃあねえか。口が腐ってもいうもんじゃあねえ。それに、いつも兄貴にゃあ、厄介をかけてるんだからな」
「だろうな。そうなくちゃならねえ。おらあな、定公、自分でも分ってる。因果な身体に生れついたひがみで気狂いになっているんだ。こう、世間の満足な奴らがにくくてたまらねえんだ。奴らあ、おれに取っちゃ敵も同然なんだ。お前だからいうんだぜ。たれも聞いてるものはねえ。おれはこれからまだまだ悪事を働くつもりだ。運が悪くてふんづかまるまでは、おれの力で出来るだけのことはやっつけるんだ」
押し殺した声が、歯ぎしりと共に高まって、うつろの中に物すごく響いた。
そして又暫く沈黙が続いた。
「オオ、兄貴、半鐘だぜ。やっつけたな」
耳を澄せば遙に鐘の声が聞えた。
「定公、だれもいめえな」
「大丈夫だ」
それを聞くと悪魔は始めて、うつろの中からのっそりと姿を現した。