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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

夫人はどんな弱味があって、あの様ないまわしい者と密会を続けているのかと思うと、夫人までがえたいの知れないものに見えて来た。

紋三がそんなことを考えている内に、明智はずんずん本堂の方へ踏み込んで行った。ガランとした本堂にはもう夕暗が迫って、赤茶けた畳の目も見えない程になっていた。妙な彫刻のある太い柱、一方の隅に安置された塗りのはげた木像、大きな位牌の行列、奇怪な絵のかけ物、香のにおい、それらの道具だてが、底の知れない不気味さを醸し出していた。無論人の気勢はなかった。

明智は注意深く堂の隅々、物の陰などをのぞき廻って、二三の広い部屋を通り過ぎ、最後に庭に降りると、石燈籠や植木の間もくまなく調べた上、板塀の開き戸を開けて、墓地の方に出て行った。紋三達は縁側の下にあった庭草履を穿いてそのあとに続いた。

墓地ももう大方暗くなっていた。往来に面した方の生垣の破れ目から、そこに明智の部下の者が見張っているのが、ちらついて見えた。紋三はいつかの晩、その破れ目から墓地の中へ忍び込んだことを思い出さずにはいられなかった。

「ホラ御覧なさい。あすこの黒板塀が細く破れているでしょう。