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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
丁度あの向側が人形師の安川の仕事場になっているのですよ。あなたすみませんが、暫くあすこを見張っていて下さいませんか。僕達はこちら側のO町に面した家を一応調べて見ますから」
明智は刑事の方をふり向いて、丁寧にいった。刑事はいなむ訳にも行かぬので、指図に従って板塀の方へ歩いて行った。O町の例の家の側はまばらな竹垣になっていて、少し無理をすれば、どこからでも出入りが出来る様に見えた。
「君、一寸ここを見給え」
明智はふと立止って、墓地の一方の隅の銀杏の木の根許を指さした。そこには木の幹の陰に大きな穴があって、その中にゴミがうずたかく積っていた。
「これはお寺のゴミ捨場になっているらしいのだが、僕は二三日前の晩ここへ忍び込んで、このゴミの中をかき探したり、新しい墓地をあばいて見たりしたのだよ。三千子さんの死骸がこの辺に隠されているかと思ったのだ」明智は何でもない事の様にいった。「それはね、ホラ山野の邸から三千子さんを運び出すのに、だれかが衛生夫に化けてゴミ車を利用した形跡のあったことは君も知っているだろう。ゴミ車は吾妻橋の所で行方が分らなくなったのだが、君から一寸法師のことを聞いたものだから、あのゴミはひょっとしたらここへ運ばれたのではないかと疑ったのだよ。