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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
ある時は一間ばかりの所を、両手で電線につかまって渡りさえした。一寸法師の軽業だ。
そうなると明智はとても敵わない。僅の所を、一寸法師の真似が出来ないばかりに、大廻りしなければならないのだ。見る見る二人の距離は遠ざかって行った。
正体をあばかれた畸形児は、もう死にもの狂いだった。逃げたとて、逃げおおせる見込はないのだけれど、そんな事を考える余裕はない。彼はせめて人形師安川の家までたどりつこうとあせるのだ。
やがて、畸形児の行手に一軒の湯屋の大きな屋根が立ちふさがった。うしろを見れば、追手はいつの間にか二人になっている。ぐずぐずしている内にはまだ人数がふえるかも知れないのだ。彼は思い切って湯屋の小屋根に飛び降りると、軒伝いに小さくなって走り出した。だが、やっとの思いで曲り角まで達した時、騒ぎを聞きつけて先廻りをした一人の刑事が、向うの屋根からピョイピョイと飛んで来るのが見えた。そして、彼の姿を見つけると、いきなり大きな声で怒鳴り出した。絶体絶命だ。
一寸法師は最後の力を絞って、樋伝いに湯屋の大屋根に登った。だが、その一際高い棟の上でホッと息をつく間もなく、追手達は同じ屋根の両方の端にとりついていた。