轻松读懂日语经典作品
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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
逃げられる所まで逃げましょう」
紋三は夫人を引ずりながら、上ずった声でいった。それでも彼女は暫くの間、紋三の腕の中でもがいていたが、やがて力がつきた。紋三は夫人の身体が突然しっとりと柔かく、重くなったのを感じた。彼女は身も心も疲れ果てて、あらがう気力も失せたのだ。
紋三は殆ど夫人を抱き上げる様にして、堤を北へ北へと走った。行くに従って人家がまばらになり、夕暗は一層色濃く迫って来た。幾町走ったであろうか、ふと見れば、堤の右手に当って真暗に茂った深い森があった。
紋三の足は二人分の重味の為にもういうことを聞かなくなっていた。息切れがして胸がはじけ相だった。丁度その時休み場所には屈強の森が見つかった。彼は倒れ込む様にその中へ入って行った。殆ど気を失った夫人の身体を大樹の蔭の草の上に寝かせて置いて、堤に引返すと、彼は川の所まで這おりて、汚い水をすくって飲んだ。そうして少しばかり咽喉が楽になると、今度はハンカチに水を含ませてそれを持って森の中へ入って行った。
百合枝は元のままの姿勢でそこに仰臥していた。顔だけがクッキリと浮び、淫がわしくとりみだした風情は、薄暗の中に溶け込んで、夢の様な美しさを醸し出した。