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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

そしてどっか遠いところへ行きましょう」

「イエ、もう駄目ですわ。逃げたって駄目ですわ。あいつがもうすっかり白状してしまったに違いないのですもの」

「何をいうのです。だから逃げるんじゃありませんか。それともあなたが、とても逃げおおせないと思うのだったら」彼は殉情に目を光らせて、芝居のせりふめいた声を出した。「僕は命なんかちっとも惜くないのです。あなたと一緒に死ぬんだったら、命なんかちっとも惜かないのです。僕を一緒に死なせて下さいますか」

「マア、あなたは……どうして死ぬことなんかおっしゃるのです」

「だって、あなたは絞首台が怖くないのですか。無論僕だって逃げられるだけは逃げた方がいいと思うのだけれど、でもいよいよ逃げられなくなった時は、死ぬ外ないじゃありませんか」

「それはそうですけど。……」

百合枝はそういったまま、暗の中に坐って、長い間黙っていた。紋三も彼女の一方の手を握り締て物をいわなかった。

「あなた、どこまでも私の味方になって下さるわね」

「どうしてそんなこと聞くのです。分りませんか」

「分ってますわ。でも、私が今まで通り山野の貞淑な妻であっても」

「エエ」