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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
「どんなことがあっても?」
「誓います」
「じゃいいますが、三千子を殺したのは私ではないのです。外に下手人がいるのです」
「エ、それは一体だれです」
紋三はびっくりして尋ねた。
「山野です。私の夫の山野です。ですから、私は一刻も早く家に帰って、あの人を逃さなければなりません」
「だって、山野さんは三千子さんの実の親じゃありませんか。そんな馬鹿なことがあるもんですか。よし又そうとした所で、逃すなんて、あの大病人をどうしようというのです。それに、お邸には今頃はもう警察の手が廻っているに相違ないのですよ」
「アア、やっぱり駄目ですわね。でもひょっとしてあの不具者がうまく逃げてくれたら、そうすれば秘密がばれないで済むかも知れないのです」
「あいつですか。あいつが秘密の鍵を握っているのですか。それで、あなたはあんな奴の命令に従っていたのですね。御主人の罪を隠したいばかりに」
「その外に私に出来ることはなかったのです」百合枝は涙声になった。「そのことが分った時から、私は山野の家名と主人の安全のために、命を捨てても尽さなければならないと決心したのです。それが私のなくなったお母さまの教えなのです」