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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

でも私は主人を疑う様な素振は、これっぽっちも見せないでいました。ああして病気までしているのを見ると、気の毒で仕様がなかったのです」

「蕗屋がどうかして秘密を知ったのですね」

「エエ、はっきりしたことはいえないんだけれど、あのゴミ車を挽いたのが蕗屋じゃなかったかと思うのです。だって、まさか山野自身がそんな真似はしまいし、養源寺さんは、あの不具者でしょう。外に三千子の死骸を搬ぶ様な人がありませんもの。しかし、そんなことを今更詮索して見たって始まらないわ。小林さん、あたしどうすればいいんでしょうね」

「兎も角御邸へ帰って見ようじゃありませんか。まさかさっきの様に僕と駈落して下さいとはいえませんからね」紋三は赫くなってぎこちなく冗談みたいなことをいった。「うまく彼奴が逃げてくれるか、一層屋根から落ちて死にでもしたら、又善後策のほどこし様もありましょうが、しかしこうなったらどっちみち覚悟しなきゃなりますまい。この先とも僕はあなたの味方になって出来るだけのことはやって見ますよ。それはお許し下さるでしょう」

「私こそお願いしますわ」

夫人が他意なく縋ってくるのを見ると、愚なる紋三は、又少しうれしくなった。