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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

やがて二人は森を出て堤の上を山野家の方へ歩いていた。

「ですが、分らないのは山野さんの心持です。全体どうして、実の娘さんを殺す気になったのでしょう」

「山野は商売人にも似合わない堅苦しい男ですの、そしてカッとなると、随分思い切ったことをやるたちですから、多分三千子のふしだらを感づいて折檻でもするつもりだったのがつい激した余り、あんなことになったのではないかと思いますわ。それにはね、また色々な事情がありますの、召使たちにも隠してあったのですが、あの逃げて行った小間使の小松というのは、本当は主人の隠し子なんですの。堅い人ですけれど若い時分にはやっぱりしくじりがあったのですわ。それを普通なら娘として家へ入れる所を、主人が今いう頑固者だものですから、娘のしつけや、親戚の手前不都合だといって、それは蔭になって目はかけていましたけれど、表面は小間使ということにしていましたの」

「それじゃ、三千子さんと小松とは姉妹なんですね」

紋三は非常に意外な気がした。

「そうですのよ。姉妹でいて、二人はまるで気質が違うのです。三千子さんは大のおてんば、小松の方は商売人の腹に出来た子に似合わない、それはそれはよく出来た、おとなしい娘です」