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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
小林君の見たことといい、例の千住の片足事件といい、(もっともこれは全然別の事件かも知れませんが)今度の百貨店の出来事といい、凡て犯人は恐しい殺人事件のあったことを世間に知らせようとしている形があります。殊に今日のは、ちゃんと指環まではめてあった。これは山野三千子さんの手首だぞと、広告している様なものではありませんか。殺人者が自分の犯行を広告するというのは、到底考えられないことです。馬鹿か気違いでなければ、いや、どんな馬鹿でも気違いでも、まさかそんな乱暴なことはしないでしょう。それに、だれにも姿を見せないで百貨店の飾り人形に、死人の手首をとりつけて来るなんて、馬鹿や気違いで出来る芸当ではありません。とすると、この一見馬鹿馬鹿しく見える出来事には、何か深い魂胆がなければなりません」
明智はそこでポッツリと言葉を切って、山野夫人の青ざめた顔を眺めた。不自然に長い間そうしてじっとしていた。
山野夫人は、明智の鋭い眼光を意識して、さしうつむいたまま震えていた。彼女は余りの恐しさに顛倒して口も利けないらしく見えた。
「で、もしこれが深い計画によって行われた出来事だとしますと、その意味はたった一つしかありません。