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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
広い公園にはまばらな常夜燈の光があるばかりだった。盛り時にはどこまでも響いて来る木馬館の古風な楽隊や、活動街の人のざわめきなども、もうすっかり無くなっていた。盛り場だけに、この公園の夜更けは、一層物さびしく、変てこな凄味さえ感じられた。腕時計はほとんど十二時を指していた。
彼は腰をおろすと、それとなく先客達を観察し始めた。一つのベンチには口ひげを蓄えたしかつめらしい洋服の男、一つのベンチには、帽子も冠らぬ、魚屋の親方とでもいい相な、遊人風の男、そしてもう一つのベンチには、ハッとしたことには、さい前の奇怪な一寸法師奴が、ツクネンと腰かけていたのである。
「彼奴め、さっきから影の様に、己の跡へくっついていたのではないかしら」
紋三はなぜか、ふとそんなことを思った。変に薄気味が悪かった。その上都合の悪いことには常夜燈が丁度紋三の背後にあって、それが樹の枝を通して、一寸法師のまわりだけを照していたので、この畸形児の全身が比較的はっきりと眺められた。
モジャモジャした、濃い髪の毛の下に、異様に広い額があった。顔色の土気色をしているのと、口と目が釣り合いを失して、馬鹿に大きいのが目だっていた。