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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
彼はため息と一緒に、低い声で独言をいった。箱の中の手首は三千子のものに相違ないことが分ったのだ。それから、何を思ったのか、彼は再び三千子の部屋へ上って、暫く何かしていたが、やがて降りて来るとそこに書生の山木が待受けていた。
「奥様から、御調べがすみましたら失礼ですが御随意に御引取り下さいますように申上げてくれということでした。それから警察の方への届けなんかも、よろしく御計らい下さいます様に」
「アア、そうですか。それは御心配のない様に御伝え下さい。ですが、一寸でいいから御主人に御目にかかれないでしょうか」
「イエ、それも大変失礼ですが、主人はお嬢さんのことで、非常に神経過敏になっておりますので、出来るだけは、色々なことを耳に入れないで置きたいとおっしゃって、凡て秘密にしてありますので、この際なるべくならお会い下さいません様にということでした」
「そうですか。じゃ僕は帰ることにしますが、この箱は君がどこかへ大切に保存して置いて下さい。いずれ警察から人が来るでしょうから、それまでなるべく手をつけない様にね」
明智は化粧品のハンカチ包を大切相に懐中して立上った。