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いちねんのけい
一年の計
佐々木 邦
「面白倶楽部」1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页
貯金は碌すっぽないし、保険には入って下さらないし、何う致します? お嫁に行きたくたって三十五にもなっちゃ貰って下さる方はありませんよ」
「ツケ/\物を言う女だなあ」
「せめて二三万なくちゃ死んで戴けませんよ」
「二三万円あれば殺す気だな?」
「殺しもしませんが、死んでも困りませんわ」
「金の代りに生きているようなものだね。よし/\、済しくずしに天命を完うする算段をするさ。いよ/\真実にやめるかな」
「今度こそ是非やめて戴きます。これからはお酒を仇と思って戴きましょう」
「ウィスキーに外濠へ突き落されたと思えば仇と考えられないこともないが、俺は武士の子だから、直きに仇に繞り会いたくなる」
「相変らず古い洒落ね。親の仇と思わなくても宜いわ」
「それじゃ人類の敵と思おう。しかし汝の敵を愛せよという宗教もある」
「未練な人ね、余っ程」
「未練はあるが、いよ/\発心すると俺も来年は厄年だ。段々落ちるところが出世するから、この分で行けば今度は大川か海へ落ちるに定っている。俺だって命は惜しい。決心する」
「決心がおつきになったら、善は急げでございます」
「まあ然う急ぐこともない。急いては事を仕損じる」